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発熱時の対処法 「発熱はガマン」は正しいの?

薬剤師さんに聞いた

発熱時の対処法
「発熱はガマン」は正しいの?

発熱したとき、どんな対応をするのがいいの?

解熱剤は使わずにガマンするほうがいいってホント?

発熱時の適切な対処法について解説します

発熱の原因の多くは、細菌やウイルスによる感染症です

発熱の原因はさまざまありますが、私たちが日常的に経験する発熱で最も一般的な原因は、感染症による発熱*です。

細菌やウイルスなどの感染が起こると、私たちの脳は、病原体から体を守る防御反応として、体温の設定を普段よりも高温になるように切り替えます。

体温が高くなると、病原体の増殖が抑えられるほか、白血球などの免疫にかかわる細胞が活性化されることから、病原体との戦いを有利に進めるために、私たちの体は自ら体温を上げる戦略をとっているわけです。

*感染症による発熱:細菌やウイルスなどの感染が原因で、これらの病原体から体を守る生体防御反応として生じる発熱を指します。

「発熱はガマン」は体にとって必ずしも有益とは言えません

発熱=私たちの体を病原体から守るための仕組みであるなら、発熱があっても、解熱剤などで無理に体温を下げないほうがよいのではないか? という疑問が湧いてくるかもしれません。

確かに私たちにとって大切な生体防御反応である発熱ですが、発熱には多くのエネルギーを必要とするため、一方で、体力の消耗という代償を払うことになります。感染に伴って免疫細胞から放出される物質(サイトカイン)の影響で、倦怠感(だるさ)や食欲不振、無気力といった症状が現れることもあります*1

このように、熱が高い状態では体力を消耗しやすく、食事や水分が摂りにくくなったり、寝苦しくて思うように睡眠がとれないなど、発熱が体にとって大きな負担となってしまう場合には、解熱剤を使用し、高くなった熱を一時的に抑えて体を楽にすることも、大切な選択肢になります。
体力の消耗が抑えられ、食事や睡眠がしっかりとれることは、体の回復に必要な要素となることから、発熱に伴う症状がつらいときには、やみくもに我慢せず、解熱剤の活用を検討してみるのもよいでしょう。

発熱時の適切な対処法:発熱時にはできるだけ安静に、体を休めましょう

熱が出ると、なんとなくだるく、動きたくなくなることを多くの方が経験していると思いますが、これは「体を休めてほしい」という生体からのサインであるとも言えます*2。発熱時には無理をせず、できるだけ安静を心がけましょう。

  • 体を温める? 冷やす? どっちがいい? 発熱で体温が上がっていくとき、私たちは寒気やふるえを感じます。寒いときには部屋を暖かくして、毛布などで体を温めるようにしましょう。一方、体温が上がって暑くなってきたら、掛け物を薄くしたり、部屋の温度を少し下げたりして、熱が体にこもらないように調節しましょう。「寒いときには暖かく、暑いときには涼しく」するのが基本です。 また、汗をかいたら、濡れたままにせずに下着等をこまめに替えましょう。併せて、水分を少しずつ、十分に補給するようにしましょう。
  • 氷枕や冷却ジェルシートは使ったほうがいい? 発熱に伴う不快感を軽減したり、涼感を得るために、氷枕や冷却ジェルシートなどを活用するのもよいでしょう。ひんやりして心地いいと思える範囲で使用しましょう。冷たさを不快に感じるなら、無理に使用する必要はありません。
  • お風呂は入ってもいい? ぐったりしていて動きたくないときには、体力のさらなる消耗を抑えるために、入浴は控えたほうがよいでしょう。入浴によって脱水症状が進行することもあるので、その点にも注意が必要です。
    それなりに元気があって、さっぱりしたいときなどには、短時間の入浴やシャワー浴などで汗を流すのはよいでしょう。鼻詰まりがあるときには、湯気を吸い込むことで鼻通りがよくなるなどのメリットもあります。
  • 解熱剤は使ったほうがいい? 先に述べたとおり、発熱に伴うつらい症状に対しては、解熱剤の使用も有効な選択肢です。
    アセトアミノフェンは、主に脳にある体温調節中枢に作用し、血管や汗腺を広げることで体外へ熱を逃し、体温を下げる働きをもちます。空腹時にも服用でき、胃にやさしい成分であることから、発熱で食欲のないときなどでも使いやすい解熱剤と言えます。
    急な発熱に対する日頃からの備えとして、かぜ薬や胃腸薬とともに、解熱剤も救急箱に常備しておくと安心ですね。

 

解熱剤使用の目安・受診が必要な場合について

37.5℃以上の発熱があり、発熱に伴うだるさ、寝苦しさなどの不快な症状がある場合には、それらの緩和を目的として、解熱剤で一時的に体温を下げて体を楽にすることができます。
他方、「これから熱が出るかもしれない」からと、発熱を予防する目的で解熱剤を使用することはお勧めできません

なお、アセトアミノフェンは、医療現場では小さなお子さんから妊婦さん、高齢の方まで、年齢や性別を問わず幅広く使用されている解熱剤ですが*3、お酒との相性がよくないため、普段から酒量の多い方では、使用に際して注意が必要です。

※一般用医薬品を服用する場合は、各製品の添付文書を必ずお読みください。妊婦または妊娠していると思われる方、および高齢者の方、治療中の病気や持病がある方等は、服用前に医師、歯科医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。製品によっては成人(15歳以上の方)向けの用法・用量となっており、お子さんに用いることはできないものがあります。
※その他、アセトアミノフェンの使用上の注意点はアセトアミノフェンの特徴解熱剤としてのアセトアミノフェンをご参照ください。

  • こんなときには必ず受診してください 40℃近い熱が出ると、脳への影響などを心配される方もいますが、感染症に対する生理的な発熱では、通常、41℃を超える高温になることはなく、脳に悪影響が及ぶことはありません*4。ただし、もしそれ以上に体温が上昇している場合には、別の原因が考えられ、早急に対応が必要な状態である可能性があります。できるだけ早く医療機関を受診してください。
    また、発熱のほかに、強い息苦しさ(呼吸困難)、けいれん、意識障害などの、強い症状がある場合や、こうした症状の有無にかかわらず発熱が3~4日続く場合にも、医師の診察を受けるようにしましょう。治療中の病気や持病がある方も同様に、主治医やかかりつけ医などに相談するようにしましょう。
    なお、発熱があって受診する場合には、あらかじめ医療機関に電話などで問い合わせ、受診の方法を確認するほうがよいでしょう。

熱中症による体温上昇には、解熱剤は無効です

アセトアミノフェンなどの解熱剤は、主に脳にある「体温調節中枢」に作用して熱を下げる働きをします。一方、高い外気温や脱水などによって体温調節中枢によるコントロールが効かなくなるために体温上昇が起こる熱中症では、解熱剤は有効ではありません。熱中症が疑われる場合には、すみやかに涼しい環境に移動させ、水分補給や体を十分に冷却するなどの対応が必要です*5


【監修】宮原好美さん(薬剤師)

《参考文献》
*1 岡 孝和:心身医学. 2018; 56(2): 204-8.
*2 渡辺恭良:日本生物学的精神医学会誌. 2013; 24(4): 200-10.
*3 カロナール®錠、カロナール®坐剤 添付文書.
*4 樋口敬和:日本内科学会雑誌. 2011; 100: 509-12.
*5 日本救急医学会:熱中症診療ガイドライン2015.